supplod さんの「 つり球 」の感想

76点 つり球

独特な画風の美術と作画で描かれる「江ノ島×宇宙人」男子高校生青春アニメ

なんだろう……異色でヘンテコな作品であるのは間違いないんだけど、後半にかけてのスケールの大きな展開は王道というか至極ありきたりな面もあって、なんて言ったらいいんだろう……。そのなかでも、パンデミックの要素が江ノ島踊りとか、シリアスになりきらないこのアニメ特有の一線は守っていて好き。

クライマックスの話をラスト4,5話かけてやるのは流石に長過ぎないか?と思った。DUCK隊長さんが敵役みたいなツラして終始ちゃんと自分の責務を果たそうとしているのが良かった。あとガルパン並に市街地に軍用機が走る絵面とか、港に思いっきりミサイル着弾して崩れ落ちるお姉さんのシーンとか、もはやシュールで面白かった。
地域の海の伝承要素をクールのクライマックスに持ってくる脚本は凪あすを思い出す。

本作のいちばんの美点は、なんといっても画のタッチ、美術、色使いだろう。用語を知らないのでうまく表現出来ないが、リアル調ではなくベタ塗りっぽい画風に、わりとドギツい色調でこのアニメでしか見られない「江ノ島」を作りだしていた。特に、「キレイな海」を表現するときに、有毒な工業排水でも漂ってるのか?と訝しんでしまうくらいムラサキとかそっち系の色を使っているのが面白かった。

最終話で「このまま台風が接近すれば横須賀のアメリカ基地まで江ノ島踊りで侵食されて国際問題になります!」という懸念が示されるの、江ノ島という地理設定をそう使うのか〜と感心した。


OPがフジファブリック「徒然モノクローム」、EDがさよならポニーテールによる「空も飛べるはず」カバー、そして音楽が栗コーダーカルテットとサブカルの極みみたいな布陣。クール後半はかなり不穏な締めが多いなかでさよポニ「空も飛べるはず」が流れ出すチグハグ感がおもろいし、緊迫した場面でも栗コーダーカルテットのどことなく間の抜けた(もちろん良い意味で!)音色が添えられるのが、このアニメらしさを生んでいた。

ヤマーダお前25歳だったのか……高校生4人組みたいな雰囲気だしやがって……w

最終話の怒涛のヘテロカップリング乱立ウケる

主人公ユキの「緊張すると般若の形相になってしまう」という奇抜な設定すごく好きなんだけど、彼も青春アニメ主人公としてどんどん「成長」していって、あまりあの面が拝めなくなったのは残念に思う。

あと、お婆ちゃんのキャラクターがめっちゃ良かった!! 『絶対少年』横浜編のお婆さんはすげぇ説教臭くて「含蓄のある老人」感が丸出しで嫌いだったけど、ユキのお婆ちゃんはずっといい人。理想的な老人キャラの造形だと思う。大人らしさ、包容力と、可愛げもあって……死ななくてよかった……

最終話見終えたあとで1話見返したら、1話が結局ピークだったとは思ってしまった・・・

2022-09-06 18:38:37