supplod さんの「 ガールズ&パンツァー 劇場版 」の感想 89点 ガールズ&パンツァー 劇場版 おうちにかえろう 2023/8/20(日) TV版→OVA→劇場版 の順に一気に観返した。劇場版を見るのは……映画館も含めて5, 6回目くらい? 一度学園艦から追われたときに、各チームが学校にそれぞれの方法で別れを惜しんだり、そのあとも大洗で各々に生活している描写とかが本当に好き。つらいし悲しいんだけど、なんやかんやみんなたくましくて、画面がシリアスになりきらないで常にどこかわちゃわちゃしているガルパンが大好き。 あと、船から降ろされて戦車を取り上げられたあとで、バスで移動していたり、サンダースの飛行機が活躍したりと、また別の乗り物が画面に登場してくるのがとてもいい。戦車が走るのを見慣れてしまったために、大洗の車道を普通のバスとかが走っていると逆に新鮮に思えてしまうのも面白い。 公開当時、「実質マッドマックス怒りのデスロード」とよく言われていたけど、確かにそっちを履修したあとで観返すとマジでそんなかんじだと思う。硬派で迫力満天の乗り物戦闘アクションシーンがほとんどを占めている点も共通しているが、それだけでなく、「うちにかえる」物語というのも同じ。 今回観返して、かなり露骨に『不思議の国のアリス』モチーフを引用していることにようやく気付いた。島田ありす、ジャバウォッキー、遊園地、そして「うちにかえる」物語構造……。 転校の書類の捺印のために親元へ帰らなくてはいけないのからして、「うちにかえる」のを徹底している。 みほにとって、姉であり黒森峰時代の先輩であるまほと久しぶりに共闘することもまた、別の里帰りであったろう。 エンドロールで、大洗女子だけでなく、駆けつけてくれたそれぞれの高校の「うちにかえる」様子を描いているところまで完璧。 ラスボスたる島田ありすは飛び級で大学選抜に入っていて、おそらく作中で唯一うちに帰れていないかもしれないのが示唆的。アリスなのに……。 あのボコミュージアムが彼女にとって、「うち」とは異なるけれどふるさとのような心安らぐ楽園になれたのだろうか。 というか、あれだけ戦車道の試合で廃遊園地を破壊しまくった結果として、その出来損ないのミニチュアのようなボコミュージアムというもう一つの遊園地を再興した、ありすにとっての物語はなんなのだろう。 あと、継続高校のメンツがいちばん好きなのでそれとも絡めると、継続トリオはいちおう学校という居場所があるとはいえ、流浪の民みたいなモチーフを背負っている。だから、うちに帰ることがメインテーマの本作において、その意味でも彼女たちはやや異質な立ち位置にあるのかもしれない。本編の試合後、遭難してるし……。 しかし、それをいえばそもそも学園艦に住む大洗女子やその他のキャラもみんな、海の上で寄る辺ない生活を送っている節はあるのだ。つまり、完全で永久不変の「うち」なんてものは存在せず、原理的に不安定なものなのかもしれない。ひとは誰しもが漂泊の途上であり、そのなかで束の間の安らぎを得られる居場所を得たり失ったり、また還ったりを繰り返している。「うち」とは絶対的なものではなく、西住みほにとって大洗女子学園も西住の実家も両方「うち」であるように、いくつあってもいい。ひとつのうちを失ってもがいているときに、別のうちにかえっていることもあるだろう。「うち」とはひととの繋がりであり土地であり、そして自分の「うち」側にある記憶でもある。この映画はそういうことを慎ましく表現している気もする。 Tweet 2023-08-21 00:14:43
89点 ガールズ&パンツァー 劇場版
おうちにかえろう
2023/8/20(日)
TweetTV版→OVA→劇場版 の順に一気に観返した。劇場版を見るのは……映画館も含めて5, 6回目くらい?
一度学園艦から追われたときに、各チームが学校にそれぞれの方法で別れを惜しんだり、そのあとも大洗で各々に生活している描写とかが本当に好き。つらいし悲しいんだけど、なんやかんやみんなたくましくて、画面がシリアスになりきらないで常にどこかわちゃわちゃしているガルパンが大好き。
あと、船から降ろされて戦車を取り上げられたあとで、バスで移動していたり、サンダースの飛行機が活躍したりと、また別の乗り物が画面に登場してくるのがとてもいい。戦車が走るのを見慣れてしまったために、大洗の車道を普通のバスとかが走っていると逆に新鮮に思えてしまうのも面白い。
公開当時、「実質マッドマックス怒りのデスロード」とよく言われていたけど、確かにそっちを履修したあとで観返すとマジでそんなかんじだと思う。硬派で迫力満天の乗り物戦闘アクションシーンがほとんどを占めている点も共通しているが、それだけでなく、「うちにかえる」物語というのも同じ。
今回観返して、かなり露骨に『不思議の国のアリス』モチーフを引用していることにようやく気付いた。島田ありす、ジャバウォッキー、遊園地、そして「うちにかえる」物語構造……。
転校の書類の捺印のために親元へ帰らなくてはいけないのからして、「うちにかえる」のを徹底している。
みほにとって、姉であり黒森峰時代の先輩であるまほと久しぶりに共闘することもまた、別の里帰りであったろう。
エンドロールで、大洗女子だけでなく、駆けつけてくれたそれぞれの高校の「うちにかえる」様子を描いているところまで完璧。
ラスボスたる島田ありすは飛び級で大学選抜に入っていて、おそらく作中で唯一うちに帰れていないかもしれないのが示唆的。アリスなのに……。
あのボコミュージアムが彼女にとって、「うち」とは異なるけれどふるさとのような心安らぐ楽園になれたのだろうか。
というか、あれだけ戦車道の試合で廃遊園地を破壊しまくった結果として、その出来損ないのミニチュアのようなボコミュージアムというもう一つの遊園地を再興した、ありすにとっての物語はなんなのだろう。
あと、継続高校のメンツがいちばん好きなのでそれとも絡めると、継続トリオはいちおう学校という居場所があるとはいえ、流浪の民みたいなモチーフを背負っている。だから、うちに帰ることがメインテーマの本作において、その意味でも彼女たちはやや異質な立ち位置にあるのかもしれない。本編の試合後、遭難してるし……。
しかし、それをいえばそもそも学園艦に住む大洗女子やその他のキャラもみんな、海の上で寄る辺ない生活を送っている節はあるのだ。つまり、完全で永久不変の「うち」なんてものは存在せず、原理的に不安定なものなのかもしれない。ひとは誰しもが漂泊の途上であり、そのなかで束の間の安らぎを得られる居場所を得たり失ったり、また還ったりを繰り返している。「うち」とは絶対的なものではなく、西住みほにとって大洗女子学園も西住の実家も両方「うち」であるように、いくつあってもいい。ひとつのうちを失ってもがいているときに、別のうちにかえっていることもあるだろう。「うち」とはひととの繋がりであり土地であり、そして自分の「うち」側にある記憶でもある。この映画はそういうことを慎ましく表現している気もする。
2023-08-21 00:14:43