supplod さんの「 前橋ウィッチーズ 」の感想 82点 前橋ウィッチーズ フェミニズムや反差別思想を前面に打ち出した『虎に翼』を、深夜の萌えアニメ文脈にあわせて見事にリライトしている https://note.com/kksk/n/ndf2d2cd62cff 以下、↑のコピペ 今年(2025)に入って『虎に翼』を一気見していたので、同じ脚本家の吉田恵里香さんがシリーズ構成をやっているオリジナルアニメ『前橋ウィッチーズ』は気になっていました。 リアタイからはやや遅れて、9話まで放送している時点で一気見して追いつき、あとは毎週1話ずつ楽しみました。 2025/6/3(火) 5話まで おもしろい。評判通り。 ミソジニーやヘイトスピーチが蔓延するニコ動で本作を観る、というのがまた別のスリルと楽しみを加えてくれている。 「女の悪いとこ出ちゃってるな」とかいう典型的なミソジニーコメントニコ動でアニメを観るためにはこれより酷いコメントを日常的に流し見なければならない まだ明示的に反ミソジニーやフェミニズムを打ち出してはいないが、いずれそういう展開が来るのを楽しみにしている。 1話の時点では面白さが掴めなくて心配だった。そういう意味でかなり挑戦的な構成。というか、主人公のキャラからして非常に奇抜だし、深夜アニメの中でもなかなかに見づらい、ノリが特殊なアニメだと思う。序盤で話題にならなかったのも頷けるヘンテコさ。コミカルとシリアスの混ざり具合といい、会話のハイテンポさと噛み合わなさといい……。 魔法の力を数値換算して、魔法空間の維持費などの概念を持ち込むのがオモロいし発想が卓抜している。ユイナがショックを受けてフリーズするローディング演出など、コメディの演出もいちいち凝っている。 1から0になるかと思いきや小数に突入するここ笑った 5話は、一方的な巨大感情百合を「重い」として、成就させないまま前向きにエピソードを閉じたのが良かった。「ビターエンド」でいい。問題はすぐには解決しなくていい。いったん留保して、また考え続ければいい。そして、あまりに一方的な感情をぶつけることが常に美徳とされ礼賛されるのはおかしい。「エモエモ」に釘を刺すバランス感覚。 主人公の、空気は読めないけど要所要所で鋭く「正しい」ことを言ったり、間違いを指摘されたらすぐに認めて謝ったりするところは『虎に翼』の寅子にそっくり。「はて?」とも言いそう。 1話で、女性の医学部進学について。2-3話のアズ編で体型(プラスサイズ)とルッキズムについて。4-5話のマイ編で、ミスコンとSNSインフルエンサー界隈と執着(百合)について。 主人公たちは高校生らしいけど、学校生活や日常生活がほとんど描かれない。まぁ、ファンタジー空間にそれぞれのプライベート空間(基本的に家庭)からアクセスして集合する[かがみの孤城]的なシステム故に、そのキャラの掘り下げ(暴露)回までは私生活を極力見せられないから仕方ない。 魔法少女が歌うことで相談者のお悩みを解決に導くんだけど、歌詞をしっかり聴く習慣も能力もないので、どういうことなのかイマイチ分からないままに解決しているのは不満といえば不満か。イメージ映像などの演出は頑張ってるけど。 というか、相談者はメイン5人以外なのに、結果的に彼女たちの抱える問題をも同時に解決に導いていかなくてはいけない脚本は、かなり高難度だと思う。なので、アズ編ではアズと同系統の悩みを抱える人がお客になり、マイ編ではマイと付き合いの深い元親友がお客となった。 8話まで よかった〜 ボロ泣きした〜〜チョコが自身の境遇を3人に伝えづらいのをユイナがすぐに察して、マポで脳内に直接送ることを提案するシーンが特に泣けた。キョウカが自分を恥じて穴に埋まりながら号泣するところでももらい泣きした。ヤングケアラーのための行政福祉サービスのプロモーションをする素晴らしいアニメ6話ラストのVTuber性加害にはゾッとしたが……前橋市長になる、か。頑張れ〜 2話完結を2連続でやっておいて、ここでふたりぶんを3話完結エピソードでやる構成がおもしろい。ユイナのトートロジーめいた言い回しが、ここに来て徐々に、意義深い名言として物語を牽引するようになっているの凄い。「しんどいときにしんどいっていうのしんどいよね」「解決しなくて解決することもある」等。 チョコ・キョウカのペアと、アズ・マイのペアがいつの間にか形成された感があるけど、ユイナはどうするんだ。今のところ、いずれのペアも百合カプとしてそんなに推せはしないかな…… お話は良かったけど。 そういえば、歌唱ライブは不特定多数に向けてではなく、あくまで相談者ひとりに対して歌うものであるのが良い。5人が1人に向けて歌う。(8話は相談者2人組だけど)大勢の観客に向けてライブするアイドルものとは線を引いている。 謎のオリジナルバースデーソングすき 6/4(水) 9話 1話の医学部志望の子が再度来店したり、アズの体型カミングアウトについて再び焦点を当てたり。一回きりですべてが救われて解決するわけではなく、いったん後回しにした問題にちゃんとあとから向き合うのを1クールアニメで見事にやってのけている。お悩み解決型のストーリーテリングを現実的に再構成しているかんじ。すばら。 花火が本物かどうかよりも、誰と見るかが大事。←良いシーンなんだけど、『BLEACH』の藍染隊長の掌編を連想してしまう……(花火を見ながら「誕生日が正確かどうかより、自分の誕生日を知っていることそれ自体が何より幸せだ」的なことをいう) この人がラスボス? あと3, 4話だろうし自然な流れで(アクシデンタルに)アズの体型が晒されることに。脚本家は当事者を尊重してこういう強制的なカミングアウト展開をあんまり描かなそうだけど…… 今のところ、5人とも同じくらい好きかな~~ 特定のお気に入りキャラが出来ないのは個人的には良いことだと思っている。 ここで吉田恵里香さんが脚本を書いているショートアニメ『Artiswitch』を観たら、実質『前橋ウィッチーズ』の前身・スピンオフ的なアレだった。 6/9(月) 10話 ユイナはやっぱり友達がいなかったのか。でも「親切かどうかは自分じゃなくて相手が決めることだよ」とか、鋭い客観視が出来るのになぜ、友達に引かれていることには気付けないのか……アズが布団から出て以降、ずっと泣いてる 温かい……こういう美少女アニメで、普段のキャラが化粧している姿(orすっぴん)だとわざわざ言及されることは珍しい気がするけど、プリキュアとか女児向けアニメだとそうでもないのかな「DM即スクショ」ww リアル~~~!ずっと泣いてるwww そうだったらオモロい、と思った展開がすぐに実現した。深夜までお仕事お疲れ様です!なんか『あの花』最終話みたいになってきたぞ こういう大味の展開嫌いじゃないよ~~~!この5人で別々の方向に去るやつ、聖地巡礼で流行りそう うわ~~! なんだその特殊ED演出!!! キャラの姿も歌声も消す、背景インストED。公式サイトからも消えてるっぽい グッズ情報だけは消えてないのおもろい。資本主義…… 6/16(月) 11話 溜め回。あっさり再結集して記憶を取り戻す。そこのあっさり感を薄めるためか、ユイナだけは記憶を取り戻しそうで取り戻さない梯子外しのコメディを数度用意していた。魔法使い見習いはもういいと決意した5人だけど、たしかに魔法じたいがそもそもファンタジックで、本作のきわめて現実主義的な姿勢とは合わないから、妥当な着地だろう。 栄子のお客の「先輩の恋人に片想いしている」子は同性愛者っぽいなぁ。ホントにそこでミスリードを仕掛けてきていたら、シャバいというか、やや差別的でモヤるけど。 ユイナ母、娘が落ち込んでいるからって一万円渡して豪遊して来なさいとか、優しくて豪胆だなぁ。『虎に翼』第9週の、「贅沢」をしてきなさいと母から渡されたお金で寅子が焼き鳥を買うくだりを思い出す。 6/23(月) 12話 最終回 うーむ…… Aパートで闇堕ち栄子ちゃんを爆速で救済して、Bパートでは魔法使い見習い修行が終わったときの夢オチをしてから最後にライブパートやって終わり。実に丸い大団円という感じだ。どこまでも正しいんだけど、それゆえに綺麗事っぽく映ってややついていけなさを覚えてしまうという、『虎に翼』の終盤とほぼ同じような気持ちになった。観客ナシでアイドルが自分自身のために歌い踊るのは良かった。最後の客が花澤香菜CVなのは何だったんだ とくに深い意味はないのか ・感想まとめ 10話まではすごく好きで、間違いなく傑作だと思うけど、ラスト2話がちょっと微妙だったかな。5人の記憶があんなにあっさり戻るなら、そして英子もあっさり光堕ちするなら、わざわざクライマックス感のために闇落ち店乗っ取りという大味な展開をやらなくても良かったじゃん、と思ってしまう。そこまでが、すごく丁寧に社会問題やフェミニズム的な話を扱ってくれていただけに、最終的にはよくあるアイドルものみたいな感じで着地したのが残念だった。無論、これはわたしが本作の深みと良さを汲み取れていないだけだと思うが……それでも自分は自分の素直な気持ちを大切に認めて貫くし、それをゆいなっちょりんは受け止めてくれるだろう。 『前橋ウィッチーズ』は『虎に翼』を深夜の萌えアイドルアニメ文脈に乗せて変奏した作品であり、その意義は、朝ドラを観なかったりフェミニズム・反差別にそこまで関心のなかったりするオタク層に、実質『虎に翼』を届けることにあるだろう。萌え深夜アニメ的なキャラデザと造形を設定しながらも、オタク層だけでなく、女の子がかわいい女児アニメとして子供にもわりと安心して見せられる教育的な作品でもある。(VTuber性加害の具体的な描写を「DMで言い寄って男性の裸体画像を送り付ける」に留まらせたのは、明らかに子供が視聴することを前提にしたライン引きだろう) こうした点だけでも客観的な素晴らしさはいくらでもいえるが、他の誰でもない自分自身に深く深く刺さる作品には惜しくもなり切れなかった。それは、自分がよく考えてみれば美少女アイドル萌えアニメがジャンルとしてあまり好きではない(前橋ウィッチーズの5人はみんな可愛いし好感が持てるが、とはいえ虎つばの梅子さんやよねさんのほうがずっと好き)というのと、吉田恵里香脚本の非常にリベラルで反差別的な思想へとても共感・連帯したうえで、やはり特権的なマジョリティ男性である自分が吉田作品に勝手に感じとってしまう "限界" ゆえだろう。 例えば見事に造形された美少女キャラクターたちに大きな魅力を感じて愛する回路で、あるいはフェミニズムや反ルッキズム、ヤングケアラー問題などの社会的な要素をきわめて倫理的に扱う態度に感銘を受けてエンパワメントされる回路で、本作を最後まで思いきり楽しみ切れるひとは数多くいるだろうし、わたしもそうした方々とそんなにかけ離れてはいないはずだが、かといって乗り切れもしない。 とりあえず、本作が楽しめたオタクで『虎に翼』未視聴のひとは今すぐNHKオンデマンドに入って一気見したほうがいいです……と言いたいところだけど、『前橋ウィッチーズ』が実質『虎に翼』なので、こっちを観ればもうそんなに観なくてもいいのかもしれない。ユイナの言動に特に魅力を感じるひとは、猪爪寅子も好きだろうとだけは言っておく。 Tweet 2025-06-23 15:45:52
82点 前橋ウィッチーズ
フェミニズムや反差別思想を前面に打ち出した『虎に翼』を、深夜の萌えアニメ文脈にあわせて見事にリライトしている
https://note.com/kksk/n/ndf2d2cd62cff
Tweet以下、↑のコピペ
今年(2025)に入って『虎に翼』を一気見していたので、同じ脚本家の吉田恵里香さんがシリーズ構成をやっているオリジナルアニメ『前橋ウィッチーズ』は気になっていました。
リアタイからはやや遅れて、9話まで放送している時点で一気見して追いつき、あとは毎週1話ずつ楽しみました。
2025/6/3(火)
5話まで
おもしろい。評判通り。
ミソジニーやヘイトスピーチが蔓延するニコ動で本作を観る、というのがまた別のスリルと楽しみを加えてくれている。
「女の悪いとこ出ちゃってるな」とかいう典型的なミソジニーコメントニコ動でアニメを観るためにはこれより酷いコメントを日常的に流し見なければならない
まだ明示的に反ミソジニーやフェミニズムを打ち出してはいないが、いずれそういう展開が来るのを楽しみにしている。
1話の時点では面白さが掴めなくて心配だった。そういう意味でかなり挑戦的な構成。というか、主人公のキャラからして非常に奇抜だし、深夜アニメの中でもなかなかに見づらい、ノリが特殊なアニメだと思う。序盤で話題にならなかったのも頷けるヘンテコさ。コミカルとシリアスの混ざり具合といい、会話のハイテンポさと噛み合わなさといい……。
魔法の力を数値換算して、魔法空間の維持費などの概念を持ち込むのがオモロいし発想が卓抜している。ユイナがショックを受けてフリーズするローディング演出など、コメディの演出もいちいち凝っている。
1から0になるかと思いきや小数に突入するここ笑った
5話は、一方的な巨大感情百合を「重い」として、成就させないまま前向きにエピソードを閉じたのが良かった。「ビターエンド」でいい。問題はすぐには解決しなくていい。いったん留保して、また考え続ければいい。そして、あまりに一方的な感情をぶつけることが常に美徳とされ礼賛されるのはおかしい。「エモエモ」に釘を刺すバランス感覚。
主人公の、空気は読めないけど要所要所で鋭く「正しい」ことを言ったり、間違いを指摘されたらすぐに認めて謝ったりするところは『虎に翼』の寅子にそっくり。「はて?」とも言いそう。
1話で、女性の医学部進学について。2-3話のアズ編で体型(プラスサイズ)とルッキズムについて。4-5話のマイ編で、ミスコンとSNSインフルエンサー界隈と執着(百合)について。
主人公たちは高校生らしいけど、学校生活や日常生活がほとんど描かれない。まぁ、ファンタジー空間にそれぞれのプライベート空間(基本的に家庭)からアクセスして集合する[かがみの孤城]的なシステム故に、そのキャラの掘り下げ(暴露)回までは私生活を極力見せられないから仕方ない。
魔法少女が歌うことで相談者のお悩みを解決に導くんだけど、歌詞をしっかり聴く習慣も能力もないので、どういうことなのかイマイチ分からないままに解決しているのは不満といえば不満か。イメージ映像などの演出は頑張ってるけど。
というか、相談者はメイン5人以外なのに、結果的に彼女たちの抱える問題をも同時に解決に導いていかなくてはいけない脚本は、かなり高難度だと思う。なので、アズ編ではアズと同系統の悩みを抱える人がお客になり、マイ編ではマイと付き合いの深い元親友がお客となった。
8話まで
よかった〜 ボロ泣きした〜〜チョコが自身の境遇を3人に伝えづらいのをユイナがすぐに察して、マポで脳内に直接送ることを提案するシーンが特に泣けた。キョウカが自分を恥じて穴に埋まりながら号泣するところでももらい泣きした。ヤングケアラーのための行政福祉サービスのプロモーションをする素晴らしいアニメ6話ラストのVTuber性加害にはゾッとしたが……前橋市長になる、か。頑張れ〜
2話完結を2連続でやっておいて、ここでふたりぶんを3話完結エピソードでやる構成がおもしろい。ユイナのトートロジーめいた言い回しが、ここに来て徐々に、意義深い名言として物語を牽引するようになっているの凄い。「しんどいときにしんどいっていうのしんどいよね」「解決しなくて解決することもある」等。
チョコ・キョウカのペアと、アズ・マイのペアがいつの間にか形成された感があるけど、ユイナはどうするんだ。今のところ、いずれのペアも百合カプとしてそんなに推せはしないかな…… お話は良かったけど。
そういえば、歌唱ライブは不特定多数に向けてではなく、あくまで相談者ひとりに対して歌うものであるのが良い。5人が1人に向けて歌う。(8話は相談者2人組だけど)大勢の観客に向けてライブするアイドルものとは線を引いている。
謎のオリジナルバースデーソングすき
6/4(水)
9話
1話の医学部志望の子が再度来店したり、アズの体型カミングアウトについて再び焦点を当てたり。一回きりですべてが救われて解決するわけではなく、いったん後回しにした問題にちゃんとあとから向き合うのを1クールアニメで見事にやってのけている。お悩み解決型のストーリーテリングを現実的に再構成しているかんじ。すばら。
花火が本物かどうかよりも、誰と見るかが大事。←良いシーンなんだけど、『BLEACH』の藍染隊長の掌編を連想してしまう……(花火を見ながら「誕生日が正確かどうかより、自分の誕生日を知っていることそれ自体が何より幸せだ」的なことをいう)
この人がラスボス? あと3, 4話だろうし自然な流れで(アクシデンタルに)アズの体型が晒されることに。脚本家は当事者を尊重してこういう強制的なカミングアウト展開をあんまり描かなそうだけど……
今のところ、5人とも同じくらい好きかな~~ 特定のお気に入りキャラが出来ないのは個人的には良いことだと思っている。
ここで吉田恵里香さんが脚本を書いているショートアニメ『Artiswitch』を観たら、実質『前橋ウィッチーズ』の前身・スピンオフ的なアレだった。
6/9(月)
10話
ユイナはやっぱり友達がいなかったのか。でも「親切かどうかは自分じゃなくて相手が決めることだよ」とか、鋭い客観視が出来るのになぜ、友達に引かれていることには気付けないのか……アズが布団から出て以降、ずっと泣いてる 温かい……こういう美少女アニメで、普段のキャラが化粧している姿(orすっぴん)だとわざわざ言及されることは珍しい気がするけど、プリキュアとか女児向けアニメだとそうでもないのかな「DM即スクショ」ww リアル~~~!ずっと泣いてるwww そうだったらオモロい、と思った展開がすぐに実現した。深夜までお仕事お疲れ様です!なんか『あの花』最終話みたいになってきたぞ こういう大味の展開嫌いじゃないよ~~~!この5人で別々の方向に去るやつ、聖地巡礼で流行りそう
うわ~~! なんだその特殊ED演出!!! キャラの姿も歌声も消す、背景インストED。公式サイトからも消えてるっぽい
グッズ情報だけは消えてないのおもろい。資本主義……
6/16(月)
11話
溜め回。あっさり再結集して記憶を取り戻す。そこのあっさり感を薄めるためか、ユイナだけは記憶を取り戻しそうで取り戻さない梯子外しのコメディを数度用意していた。魔法使い見習いはもういいと決意した5人だけど、たしかに魔法じたいがそもそもファンタジックで、本作のきわめて現実主義的な姿勢とは合わないから、妥当な着地だろう。
栄子のお客の「先輩の恋人に片想いしている」子は同性愛者っぽいなぁ。ホントにそこでミスリードを仕掛けてきていたら、シャバいというか、やや差別的でモヤるけど。
ユイナ母、娘が落ち込んでいるからって一万円渡して豪遊して来なさいとか、優しくて豪胆だなぁ。『虎に翼』第9週の、「贅沢」をしてきなさいと母から渡されたお金で寅子が焼き鳥を買うくだりを思い出す。
6/23(月)
12話
最終回
うーむ…… Aパートで闇堕ち栄子ちゃんを爆速で救済して、Bパートでは魔法使い見習い修行が終わったときの夢オチをしてから最後にライブパートやって終わり。実に丸い大団円という感じだ。どこまでも正しいんだけど、それゆえに綺麗事っぽく映ってややついていけなさを覚えてしまうという、『虎に翼』の終盤とほぼ同じような気持ちになった。観客ナシでアイドルが自分自身のために歌い踊るのは良かった。最後の客が花澤香菜CVなのは何だったんだ とくに深い意味はないのか
・感想まとめ
10話まではすごく好きで、間違いなく傑作だと思うけど、ラスト2話がちょっと微妙だったかな。5人の記憶があんなにあっさり戻るなら、そして英子もあっさり光堕ちするなら、わざわざクライマックス感のために闇落ち店乗っ取りという大味な展開をやらなくても良かったじゃん、と思ってしまう。そこまでが、すごく丁寧に社会問題やフェミニズム的な話を扱ってくれていただけに、最終的にはよくあるアイドルものみたいな感じで着地したのが残念だった。無論、これはわたしが本作の深みと良さを汲み取れていないだけだと思うが……それでも自分は自分の素直な気持ちを大切に認めて貫くし、それをゆいなっちょりんは受け止めてくれるだろう。
『前橋ウィッチーズ』は『虎に翼』を深夜の萌えアイドルアニメ文脈に乗せて変奏した作品であり、その意義は、朝ドラを観なかったりフェミニズム・反差別にそこまで関心のなかったりするオタク層に、実質『虎に翼』を届けることにあるだろう。萌え深夜アニメ的なキャラデザと造形を設定しながらも、オタク層だけでなく、女の子がかわいい女児アニメとして子供にもわりと安心して見せられる教育的な作品でもある。(VTuber性加害の具体的な描写を「DMで言い寄って男性の裸体画像を送り付ける」に留まらせたのは、明らかに子供が視聴することを前提にしたライン引きだろう)
こうした点だけでも客観的な素晴らしさはいくらでもいえるが、他の誰でもない自分自身に深く深く刺さる作品には惜しくもなり切れなかった。それは、自分がよく考えてみれば美少女アイドル萌えアニメがジャンルとしてあまり好きではない(前橋ウィッチーズの5人はみんな可愛いし好感が持てるが、とはいえ虎つばの梅子さんやよねさんのほうがずっと好き)というのと、吉田恵里香脚本の非常にリベラルで反差別的な思想へとても共感・連帯したうえで、やはり特権的なマジョリティ男性である自分が吉田作品に勝手に感じとってしまう "限界" ゆえだろう。
例えば見事に造形された美少女キャラクターたちに大きな魅力を感じて愛する回路で、あるいはフェミニズムや反ルッキズム、ヤングケアラー問題などの社会的な要素をきわめて倫理的に扱う態度に感銘を受けてエンパワメントされる回路で、本作を最後まで思いきり楽しみ切れるひとは数多くいるだろうし、わたしもそうした方々とそんなにかけ離れてはいないはずだが、かといって乗り切れもしない。
とりあえず、本作が楽しめたオタクで『虎に翼』未視聴のひとは今すぐNHKオンデマンドに入って一気見したほうがいいです……と言いたいところだけど、『前橋ウィッチーズ』が実質『虎に翼』なので、こっちを観ればもうそんなに観なくてもいいのかもしれない。ユイナの言動に特に魅力を感じるひとは、猪爪寅子も好きだろうとだけは言っておく。
2025-06-23 15:45:52