supplod さんの「 ざつ旅-That's Journey- 」の感想

66点 ざつ旅-That's Journey-

漫画家要素と人間ドラマ(百合)要素がなければ幾分かはマシだった

2025/5/4~6/24

5/4
1話
GW終わりを狙ってひとり旅いこうかなぁと考えはじめた流れで観た。

原作漫画は1巻だけ買って読んで「なんか違うな……」となって以降は触れていない。kashmir『ぱらのま』とかの方が、限界旅行好きからすると共感できて刺さる。こっちはあくまで、旅を商業的にキャンペーンするための大衆向け作品だから・・・。

アニメでは実写画像を取り込んでの膨大な数の背景美術がすごい。とはいえ、やっぱりなんか違うんだよな。背景すごいでしょ~~ww 聖地巡礼しに来てね~~!という意図が露骨すぎて。。

そもそも、漫画家のたまごの18歳大学生が、漫画のネタのためにTwitterアンケート機能によって旅先を決める、という(作者の半ノンフィクション的な)設定じたいが、たぶんに仕事や人間関係といった「社会」要素と絡んでおり、自分にとってのひとり旅とは思想が違うことは必定である。推し活プロモーションにも似た、(旅という)趣味をつくって地方にお金を落としながらQOLを上げよう!といったシャバい風潮を感じとってしまう。

とはいえ、会津若松の廃れた温泉街を淡々と映していくところなんかは、やっぱり良いなぁと思いもする。やがて滅んでいく「実写」の風景をアニメのなかに刻印していくことの意義。(という風に、大層な意味づけをしちゃうと「ざつ旅」から離れていくジレンマ!)

OP映像のひと昔前っぽさ(エロゲOP感)好き 本編も微妙に古臭いかんじがいい

2話
宮城-松島/富山-黒部よかった!!(手のひら返し)特に後半の、どんより曇り空の北陸の田舎町のどこにでもあるような町をだらだらふたりで歩くくだりが良かった。

ただ、取材してきた現地の風景をなるべくたくさん細やかに映したいのはわかるが、さすがにカット割りが多くて、背景がどんどん切り替わりすぎていて、あわただしく、ざつ旅のスローテンポ感が損なわれてしまっているのだけが残念友達との百合要素に関しては、まぁ、不問ということで。

3話
前話の続きから、高校の後輩と高松編へこの主人公、総愛され系? 三角関係というよりハーレムっぽくて苦手だ低級な人間ドラマなど要らんからストイックに旅を見せてくれ〜〜!!

5/5
4話
京都(伏見→宮津→天橋立)お師匠さんの毛量やばい 妖怪みたいでおもろい佐藤聡美と日笠陽子、『けいおん!』コンビだ
酒飲みが酒造をとっかかりに旅するの良いなぁ 酒に限らず、自分の好きなものきっかけで旅は始まるものほぼ毎回、温泉シーンがある。「股のぞき」シーン含めて、かなりフェティッシュというかポルノ寄り……
旅を仕事(創作)の糧にしないでくれ~~劇伴いい 藤澤慶昌さん ラブライブ!とかよりもいとか無職転生とか……の人か
『罠ガール』のキャラがゲスト出演。作者同じだったんだ ←[追記] 違う人だった。雑誌『電撃マオウ』上での繫がりで友情出演ってこと?


5/29
5話
前半の栃木・烏山線ひとり旅いいじゃん! 駅名を見てふらっと降りたり、道端の小さな神社に出会うたびに参拝したり、次の電車まで時間あるからひと駅歩いたり、めっちゃ共感できるポイントが多くて、自分の旅を見ているようだった。
ただ、精神面ではやっぱりぜんぜんスタンスが違う。「何かに気付ける旅なんだ」とか「ひとり旅の先には他人がいる」とか、そういった意義や仲間との繫がりを持ち出してくるのがマジで苦手。ニコ動のコメント欄でもみんな反発しててわろた

後半は新潟の離島・粟島。しらなかった。いいね~~夏の離島旅。でも紫髪のうるさいお友達はいらないかな…… ギャグ?のノリがキツイ。百合要素というか、友達・お仲間とのワイワイ要素がいらない。

6/3
6話
前回の離島旅続きと東京・渋谷編背景美術の質が……低い!! 質より量、を地で行っている。低解像度とか白飛びとか…… 現地ロケしてないのもありそう

そしてお話はマジで薄っぺらい・・・ これぞ「ざつ」だとか、そういうの依然に、単純にアニメとして面白くない。原作漫画を1巻で切った記憶が蘇ってきた。
この素朴さ、平板さ、凡庸さが逆に、刺激なく流し見できる旅ロケ番組っぽさを志向しているのだとしても、わたしはそういうのをわざわざアニメで見ようとは思いません。あと、旅番組志向なら、輪をかけて薄っぺらいキャラの物語要素がいらない。これで喜ぶ「百合」好きは心配になるほど。
『ひびめし』には「こういうのでいいんだよこういうので」と思うけど、何故これにはそう思えないのだろう。。 ナレーションの有無もデカい気がする。あれを入れるなら、しょうもないキャラのドラマ要素を抜いてもっと旅番組に寄せてほしい。キャラ人気(カプ人気?)も少し生み出そうとしているのがどっちつかずに思える。

6/4
7話
伊勢編と深夜バス出発まで酒好きのお姐さんがいる旅は割と好き あとは例のごとく漫画自己啓発論に帰着しさえしなければ……謎のおじさん(神さま?)も意味わからんけど良かった。東阪で2万円の深夜バスえぐいな…… 内装豪華すぎる。一度は乗ってみたいかも。それで大阪まで行って、広島まで新幹線とか不合理な旅程すぎてイイね! なんとなくの直感に従ってテキトーに決める。富豪のお遊びではあるけど。

6/7
8話
広島(宮島・呉・尾道)編なんか1周回って逆に良い気がしてきた。仕事に生きる何かを得ようと強迫的になりながら旅するのも、それで自伝的な旅漫画を書いて見事に認められるのも、何もかもが「旅」を毀損していて、これぞ「ざつ旅」!!ってかんじ。
てか、ほんとにこの旅自体を漫画にするんだな。そもそもが、作者の旅を美少女化して漫画にしているわけで、3重の入れ子構造になっている。『ドン・キホーテ』みたいなメタフィクション。
主人公ちかの、旅から漫画に活きる何かを持ち帰ろうと強迫観念に苛まれる異常な様子は、ちょっと遍歴の騎士ドン・キホーテっぽいし……。遍歴の旅人・鈴ヶ森ちか。そのうち、旅先で、自分の旅漫画の読者に出会って歓迎されたり、次のネタにしてほしくて仕組まれたトラブルに巻き込まれたりしてほしい。

毛量がすごい冬音師匠すき。てか、高1からアシスタントしてたのすごいな……ゴリゴリの早熟エリートじゃん。

6/10
9話
青森(八甲田山)、和歌山(初日の出)編 今回はずっとひとり旅漫画家設定さえなければ…… ←毎回言ってる。観るときのこちらの精神のコンディションによって印象が大きく異なるアニメ。(ざつ)旅は鏡……ドルフロのアンソロ描いたんだ。"旅"で??

10話
花巻だ!!!!! 置き聖地巡礼今回面白かった~~~ こないだちょうど行ったところだというのもあるけど、はっすが漫画家になろうとしているちかに嫉妬しているのがすごくいい。非-クリエイターのクリエイター(漫画家)への嫉妬を、フィクションの中でクリエイターが描く。
けっきょく、自分が行ったことある場所なら面白く観れちゃう……ってコト!??



6/21
11話
サンライズ・出雲・松江回(師匠とふたり)出雲で廃線跡とか、なんでもない道をのんびり歩くくだり良かった
旅先の一晩で24ページのネームを書き上げる師匠、速筆すぎるクリエイターの方々は旅を "原稿合宿" に出来ていいですね!宍道湖沿いのホテルや松江城・境港は去年行ったな~~乗るバス間違えて内心嬉しそうな主人公……

6/24
12話
最終回美保関いいな、行きたい。「なんとなく端っこに行きたい」という理由で行く先を決めるちかさん、分かるよ~~
師匠とりりさんの仲直りのくだりがキツ過ぎる。旅観も創作観も人間観・キャラクター観も、なにもかもが記号的でペラッペラすぎる。「ざつ」を極めている。
読み切り漫画をほぼそのまままるごと映す思い切りすごいな。本(フィクション)の世界と旅先(リアル)の世界を往還することをメタフィクショナルな構造で礼賛している。わたしには耐え難い。でも、商業の世界で「旅」を題材にしてビジネスをやることに、ある意味とても真摯に開き直った結果、こういう作品になっているのだろう。

……はい。お疲れさまでした。とても嫌いでした。ちかさんが漫画から足を洗って、友人関係も全て縁を切ってひとり旅に繰り出すのなら、すごく観たいです。
それか、連載がアニメ化するほどの人気漫画家になった遍歴の旅人たる鈴ヶ森ちかさんが、旅先でどこに行っても自分の作品の読者・ファンに囲まれて、(あわよくば次の作中に登場させて貰おうとして)色々もてなされたりイタズラされたりする、『ドン・キホーテ 続篇』みたいな話ならちょっとだけ観たいです。

2025-06-24 16:59:30