lucky さんの「 キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~ 」の感想

71点 キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~

いい意味でも悪い意味でも変わらないひとたち

「自分が何を頑張ったってどうせ未来は変わらないからひたむきになんてなれない」と思っている世の大人たちの後ろ向きな思考といかに戦うか、というところが最大の問題。オトナになったプリキュアたちは、この問題に対して「打開策がすぐには見つからなくてもひたむきであり続ければ未来は変わる」と真正面から前提を否定するタイプの回答を提示していた。うーん……たしかに、あえて真正面からの前提否定こそが重要である局面もあるにはあると思うが……“昔子どもだった大人たちがもう一度出会う物語”が最後にたどり着く回答としてはあまりにひねりがなさすぎやしないか?
せっかくオトナになったのぞみさんたちが見られるのなら、ひたむきさをメインウェポンにしていたコドモのころの彼女たちとは違うやり方で事態の解決策を模索する姿をみたかった。違うやり方というのは例えば、オトナならではの知識や経験やしたたかさなどなどのことだ。いちおう、彼女たちがそれなりな経験を積んできたことを示唆しようとしているシーンは全くないというわけでもなかったが……。
好意的にとらえるなら、“オトナだって、必ずしもオトナらしい手段でバリバリ問題を解決できなくたっていい。コドモと何ら変わらず、つまづき立ち止まりながら成長を重ねればいい”というメッセージを受け取る、ということもできないではない。しかし、“オトナだってつまづく”というのはべつにオトナプリキュアでなくとも旧来のプリキュアでもたびたび描かれてきたことだから新奇性が薄い。

逆に、新奇性があった点として「(旧来のシリーズでは徹底して善性のチカラとして描かれてきた)“プリキュアへの変身”が不吉なものとして描かれる」という点は大きかったと思う。ただ、設定的な掘り下げがあんまりなくて、せっかく新奇な点がもうひとつ活かしきれていない印象はある。

作画は、アクション演出が旧来のシリーズとはかなり異なっている回があって印象に残った(スタジオディーン成分か?)。あんまりプリキュアっぽくなくて、受けとめ切れていないというか、いいとも悪いとも言えない。

2023-12-25 22:42:25