supplod さんの「 山田くんとLv999の恋をする 」の感想

88点 山田くんとLv999の恋をする

女子大生主人公:木之下茜の、駄目人間さと真人間さが絶妙にミックスされた人物造形が、心にとても尾を引いている。 随所に変わった遊び心のある演出を盛り込みながらも、それらが見事に調和して前衛性を主張し過ぎずに見易いアニメになっている手腕に脱帽。浅香監督には名作少女漫画をたいへん質の良いアニメにする仕事を今後とも続けていただきたい

1,2話みた。
少女漫画原作のラブコメアニメ。いろいろと駄目人間でツッコミどころのある女子大生主人公を見ているのがとても楽しい

4話視聴後、漫画アプリで原作を最新話まで一気読みしてしまった。その感想はちょっと長くなるのでここでは割愛

4/30(日)
5話「詳しく聞かせてもらおうか」観た。前話から思ってたけど、なーんかテンポ悪くないかこのアニメ。1カットごとに溜めの時間がすげぇ長い。確かにこの回ではあそこまででキリが良いのは分かるが、だからって間延びした演出にしてしまっては本末転倒では。
あと、今話は変なトランジション演出が2,3個あった。次のカットの一部のセル画を先行して前カット上に重ねる手法、あんま見たことないぞ。それも、茜のトイレ→山田が瑠奈宅のドアを開けるカットの繋ぎで、山田の手だけを先に映すのは、茜の恐怖感を表現するという意図が分かるけど、その後の鴨田さんの車で急行する場面で店の看板の一部だけを先に出すのとかは全く意味がわからない。
あと、冒頭の山田のマウスセンシ調整シーンで補足文字をマウスの上に立体的に重ねる演出とか、終盤瑠奈視点での茜の足を映すカットの3DCGっぽい謎演出とかもヘンテコだった。なんなんだ一体・・・
調べたら、1,2話は監督の浅香守生さんが絵コンテを描いているが、3,4,5話はそれぞれ別の人。演出は毎話違う人。うーむ……そういうことなんかなぁ……

おはなしの内容に関しては、原作読んだときもヒヤヒヤして「これアニメ化して大丈夫なやつ?」と思ったが、実際アニメを観てもめっちゃ恐ろしかった。『かげきしょうじょ』でも主人公の過去のトラウマとしてやべぇ男に襲われるエピソードがあったが、あれは回想だったからまだよかった。これは現在時制で、しかも下手にコメディ調も入れてきてるからたちが悪い(Cパート!)。
1~4話ではかなり問題のある人間として描かれていた主人公の茜が、ここから急激に聖人君子の良い奴になっていく。そのギャップに戸惑う原作未読のオタク達をみて楽しむとするか(愉悦部)

5/7(日)
6話「個人的にはラブコメ展開希望」みた。前回とは打って変わってめちゃくちゃ良かった!!! これは浅香守生監督が絵コンテ切っただろうと予想したが違った。3話と同じ佐々木美和さん絵コンテ、2話の小林彩さん演出。とりあえず5話の人ではなかった。
おはなし的にも、瑠奈ちゃんが茜にすっかり懐いてただの激かわワガママ美少女になり、平和な雰囲気になるところで、このようにアニメーションとしても素晴らしいクオリティにしてくれて嬉しいよ……
前回と同じような、インターホンを押す手のセルだけ前カットに早く映す演出を今回もやっていた。あと、教室で瑠奈が「つーん」としている、そのオノマトペが、次の画角が変わったカットでは裏から見たように反転していたり、あとは風呂上りの瑛太がリビングを歩くときの「ばくはつって…」という文字がそのまま彼に付いていくのとかも凝っている。現実世界での文字演出に凝ることは、おそらくFOSのゲーム中でのコマンド表示と響き合うところがある。
また、セルの重ね表示をズラす演出は他にもちょくちょくあって、マンガ的な、背景がキラキラしたりカラフルな抽象的なものから、手前の人物のセルはそのままに、背景を現実の美術に切り替えるカットが幾つか見られた。また、FOS内の映像表現も相変わらず非常に良いし、キャラのデフォルメ表現と通常表現の行き来が絶妙だし(瑛太からの電話で起こされる山田のシーンよ!)、ベランダ→桃ちゃんの上向き顔の引きカメラワーク演出も凄かった。マジでなにもかもがほのぼのラブコメアニメとして完璧な出来だった。めちゃくちゃ派手なことはしていなくとも、手が込んでいて、手数が多くて、すべてが作品の平和な雰囲気づくりに貢献している・・・。

5/14(日)
7話「安心したいですか?」みた。諸々の処理&準備回。今回もすごく良かった!
3話連続でインターホン押す手の先行描写演出。コンテは5話と同じ澤井幸次さん。
髪留めを外したときの髪の作画は原画スタッフが本気を出していて凄かった。
大口を開けて眠っている茜を横から撮るカット、デフォルメした頭部・口をこういう風に立体的に見せる構図をあまり見たことがないのでびっくりした。すばらしい。
遂に椿ゆかりさんがちゃんと登場した! ダウナーで独特な声質。土屋李央さんってシャニマスの樋口円香の人なんだ。
Cパートでtakezoさんのアバターの真の姿、もう見せちゃうのかと思ったらギリギリ見せなくて笑ったw 原作だともっと後だったよね。

8話 山田の文化祭編
とても良かった。茜と山田のやり取りでドキドキときめく時のたっぷりと間を取った演出はハマっていた。


5/30 9話観た。椿も入れた三角関係匂わせが本格化
風邪重傷でゾンビのように自室を這いまわる茜のシーンとかほんと素晴らしい。夕暮れの公園のブランコで瑠奈ちゃんと話すシーンの作画も凄い。
今のところこのアニメへの文句がDE DE MOUSEの劇伴くらいしかない。
相変わらずいちいちシーン遷移演出が変に凝っている。茜のバイト控室→椿の真っ暗な自室でネトゲ のトランジションで、茜の控室の映像をまるで監視カメラ越しに椿がみているかのようなミスリーディングで無駄にホラーな演出はやめたほうが……。


6/4 10話 看病回 みた
とんでもねぇ高クオリティアニメーションだよこれ・・・
病身で不安定な茜のコロコロ変わる感情模様とか、シリアスとコメディの切り替えとか、テンポが良すぎる。Cパートの玄関でのやり取りもそうだし、換気のために茜がベランダの窓開けるシーンの素早いカット連鎖とか、ほんと凄い。
物語も、山田のトラウマとなっていた小学時代の記憶を茜の言葉によって昇華され、決定的に惚れるきっかけとなる山場の部分で盛り上がってきた。

6/13火 11話 椿ギルド加入回
ここしばらく薄かったネトゲ描写がたっぷりで大満足の回だった。
現実生活とネトゲライフの双方がすごく対等というか、「現実か虚構か」みたいな下らない二項対立なんて(陽キャの茜っちには)無くて、めちゃくちゃフラットにどっちも全力で楽しんでいるのが良い。オタク臭くない。すごく良い意味で少女漫画してるから。
変わった演出も相変わらずてんこ盛り。「体感 五億年」シーン素材として使いやす過ぎる。
あと2話かな? 椿ちゃんの恋のほうを清算して付き合い始めるまで行けるだろうか。

6/28水 12話 椿告白回
Aパートで告白を決心した茜が山田の家のインターホンを押すカットで、「これまでの執拗なインターホン押す手先行演出は満を持してのこのためだったのか!」と感動した。今回は先行演出ではなく「ふつう」に描いている。

今期では『スキップとローファー』に次ぐ、歩道橋アニメ。原作では椿の雨中での告白シーンって歩道橋じゃなくてふつうの歩道だったような……? 
バイト先のコンビニの前で夕暮れ時に喋るシーンとか素晴らしいですね。ガラスに映った影がデフォルメ調なのとか良過ぎる。マジで変わった演出を随所に盛り込みながらも、それらがうまく溶け込んでいて、前衛性を押し出していないのがいい。


13話 最終話
おわり!! ぶらぼ~!!!
とてもいいアニメだった!!! 椿ちゃんのシリアスなパートからギルド食事会のコメディめいた雰囲気への切り替えとか、そういうところが本当に巧みなアニメだった。
浅香守生監督、良作少女漫画を延々と良アニメ化しててほしい。濱田さんとマッドハウスと組み続けて。お願いします。

2023-06-28 10:34:35