supplod さんの「 トモちゃんは女の子! 」の感想

85点 トモちゃんは女の子!

最初1,2話の終わってるジェンダー観描写を耐えれば嘘のように面白くなった。古くて新しい傑作ラブコメアニメ

めっちゃ面白かった!!

初期コンセプトはめちゃくちゃ前時代的で差別的なジェンダー観に基づいたものだが、それをスマートにというよりは一周回ってパワーで突き抜けることでかえって(半ば無自覚に)リベラルになっているというべきか……。 「トモちゃんは女の子」だが、「女の子」規範を破壊することで、トモちゃんらしい、トモと淳一郎の関係の落としどころを描き切っていた。淳一郎側の、友情と異性愛のあいだで葛藤する描写がすごく良くて、最終的にはそれらが排反ではなく両立できると信じて実行する。ひとつの具体的なフィクションだからこそ、キャラクターたちの魅力的な描写を積み重ねていった先に納得できる関係への到達があって、物語っていいなぁと思いました。
最終話の、「トモと付き合うためにはトモの父親を倒して納得させなければいけない」という話も、この立て付け自体は言うまでもなく酷いものだし、本当に現代的・フェミニズム的であれば、そのようなキモくて理不尽なルール自体を拒否してふたりで勝手に幸せになるのが筋というものだが、そうではなく、あくまでこのルールに向き合ったうえで、トモは「〈父〉を倒すことで手に入る戦利品としてのヒロイン」ではなく、一緒に理不尽に立ち向かってアドバイスをして共闘するライバル(と書いて"トモ"と読む)であると自分自身で宣言してあの場に立っているのが、この作品らしくて良い。

みすずとキャロルという友人ポジションのふたりがいることでほんとうに飛躍的に面白くなっている作品なのだけど、それによってメインふたりのヘテロカップルの魅力が薄まるのではなくて、よりいっそう魅力的になるようにできているのがすばらしい。

おはなしだけでなく、アニメとしての画作りもすごく良かった。デフォルメ顔ほんとかわいいし、動きのあるカットもリミテッドアニメーションながら丁寧に作りこまれていた。8話後半パートは特に細田守っぽい構図・美術・撮影で印象深い。
エンディング曲が神。フルver.の配信はよ

2023-04-01 22:30:34